エッセイ執筆者
第一生命保険相互会社
シニアコンサルタント 油谷 章

  コンサルティングは信頼から
2005.10.25
1.退職給付制度の20××年問題

将来の時点で振り返ってみた場合、2000年代の初頭というのは、記憶に残る時代だったということになるかも知れません。
20××問題というのがメディアを賑わしています。カレンダーの日付でコンピュータが誤作動をするのではないかと騒がれた2000年問題がありました。
もうひとつの2000年問題は退職給付会計の導入です(2000年4月)。これによって、年金が経営に直結する問題として認識されることになりました。
また、年金資産運用では2000年度から2002年度にかけて、多くの年金基金の運用収益が3年連続でマイナスになり、先の退職給付会計導入と相俟って、年金は経営にとって看過できない問題となりました。
その後、2001年には確定拠出年金法、2002年には確定給付企業年金法が施行され、同じ2002年には税制上の退職給与引当金の制度が廃止されました。今年2005年は企業年金のポータビリティ(持ち運び)が拡充され、来年2006年には改正高年齢者雇用安定法が施行されます。
今後に目を向けると、2007年問題、2012年問題が控えています。
2007年というのは、団塊の世代(1947年から1949年生まれ)が定年を迎え始めるという年です。企業の人件費構造が大きく変化するとともに、技能の継承問題が指摘され、人事制度に大きな影響を及ぼすだろうといわれています。
2012年問題というのは、現在多くの企業で採用されている税制適格退職年金制度(適格年金)の廃止期間の最終年です。適格年金はこの年までに他の制度に移行するか廃止するかしなければなりません。
このように2000年代の初頭というのは、労働関係、特に退職給付制度にとってたいへん重要な時期なのです。

2.コンサルティングニーズの変化

コンサルティングをやっていると、状況の変化に応じてお客さまのニーズの変化を感じることができます。
数年前には、厚生年金基金の代行返上に伴う確定給付企業年金移行に関する相談が多くを占めていました。それと併行するように退職給付費用対策をコンサルティングに求めるケースが多く見られました。
最近では、厚生年金基金の代行返上も一段落、金利も底を打ち退職給付債務の拡大も止まりつつあるということで、コンサルティングの内容も変わってきています。すなわち、退職金に各従業員の仕事の成果を反映させたい、退職金を月例給与から切り離したい、転職や中途採用に不利にならない制度にしたい、グループ間の人材の異動をスムーズに行える制度にしたい、などという点に問題意識をお持ちのお客様が多くなってきています。
また、退職給付の設計ではありませんが、最近増えてきているのが、年金ALMのシミュレーションです。代行部分を返上した企業年金基金が新しい制度にあった政策アセットミックスを作りたいと考えられている、あるいは厚生年金保険法の改正によって、年金負債の特質が変わった厚生年金基金が新しい仕組みにあった運用のありかたを検討されているのだと思います。
コンサルティングの内容も、コンサルティングに求められるものも、時代とともに変化していきます。

3.クライアントとコンサルタント

コンサルタントという仕事柄いろいろな企業の方にお会いすることができます。もちろん、私たちがお相手をさせていただくのは人事や総務、あるいは財務といった限られた部署の方ですが、それでも会社それぞれがお持ちの雰囲気といいますか、社風のようなものがうかがわれて、大変勉強になります。
コンサルタントは専門的な知識や問題解決能力を持っているのは当然なのですが、クライアントである企業の方とよい関係を築くというのも大切なことです。あるいは重要なスキルといってよいのかも知れません。
ある時あるお客さまから、「コンサルタントを選ぶ基準は何ですか?」というご質問を頂きました。コンサルタントの端くれとしてはお答えしづらいご質問なのですが(何しろ私はコンサルタントを選んだ経験がないのです)、知識だとかコンサルティングスタイルだとかお答えした最後に、「一番大事なのは、お客さまがどのコンサルタントにもっとも相談しやすいかという点でしょう」とお答えしました。
また、別のお客さまからは、「退職給付制度のコンサルティングは、コンサルタントによって大きく違うというものではなく、でき上がった制度は同じところに落ち着くのだが、コンサルタントによって検討の進めやすさに差がある」というお言葉を頂きました。その通りだと思います。細かいところではコンサルタントによって違ってくることはあるでしょうが、そもそもお客さまが検討の主体ですから、でき上がりの制度はお客さまの意向によって決まります。決してコンサルタントの推奨だけで決まるものではありません。
コンサルタントは、専門的な知識とスキルをもって、リード・サポートさせていただく、そのことでお客さまの主体的な検討がスムーズに進むという形が望ましいわけです。
そのようなコンサルティングを心掛け、お客さまとの関係を大事にしたいと考えています。

4.コンサルティングにおいて心掛けていること

私たちがコンサルティングを行うにあたって心掛けていることがいくつかあります。
● 専門家としての知識・スキルを充分に発揮すること
当然のことです。しかしながら、変化の激しい時には専門的な知識・スキルをアップデート・維持するのはそれなりに大変なことです。また、コンサルタントにも得意・不得意があり、一人ですべてを兼ね備えることは至難の技です。
お客さまにベストのコンサルティングをご提供するべく、個々人のスキルと機能毎にそれぞれの専門家を配した万全の態勢でサポートすることが重要です。
● お客さまの立場に立ってコンサルティングを行うこと
これも当然ですが、コンサルティング・ファームの得意な制度、受託会社として売りたい制度ばかりを推奨していてはコンサルティングになりません。私たちはお客さまからのヒヤリング、お客さまとのディスカッションを大事にしています。
同じような状況にあっても、お客さまによって重視される事柄は違っています。個々のお客さまが何を重要とお考えなのか、退職給付制度を通じてどのようなメッセージを従業員の方に伝えようとされているのか、コンサルティングにおいては、そういったことが大事だと考えています。
また、中立性ということも常に意識しています。私たちは第一生命という企業年金制度の受託会社に所属するコンサルタントですが、コンサルティングの場ではお客さまのことを第一に考えます。第一生命にはお客さまとの絆をより太く、信頼を厚くすることで貢献していくという考え方です。
● 複数の視点を持って考えること
私たちがコンサルティングの場でお相手をさせていただくのは人事の方が多いわけですから、どうしても人事の視点でものごとを考えがちです。しかしながら、制度というのはそれに関係するすべての人のものです。したがって、私たちは常に複数の視点を持って考えるようにしています。人事の視点、従業員の視点、経営の視点などです。

5.おわりに

多くの企業がその企業にあった制度を構築することで、この2000年代初頭という変革期を乗り切り、私たちが多少なりともそのお手伝いをさせていただくことができればと考えています。

 

 

 




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