エッセイ執筆者
株式会社IICパートナーズ
運用コンサルタント 田口裕

  「継続的な年金資産運用モニタリングは受託者責任の出発点」
2005.10.01

 国民の年金に対する不安は若年層ばかりか、近く定年を迎える団塊の世代や年金の受給者に至るまで日々拡大してきています。それは、人口の減少、少子・高齢化により公的年金の役割が縮小せざるを得ない現実の中で、本来助っ人であるべき企業年金が制度変更や制度の廃止、給付の縮小に追い込まれ信頼感を失いつつあるからです。


 多くの大手企業は年金会計の導入以降、自社年金の存在が企業収益を撹乱する怖さを体験しました。その結果、企業は競って既存の年金制度を企業収益に影響を与えないか影響度の小さい年金制度(確定拠出年金制度、代行返上、キャッシュ・バランスプラン、中小企業退職金共済制度等)に変えていますが、中堅・中小企業にとっての制度変更はこれからが正念場といえましょう。多くの中堅・中小企業が採用している適格年金制度が平成23年度末に廃止が決まっているため今後堰を切ったように新制度への移行が始まるからです。


適格年金制度の廃止は企業の退職給付制度(一時金、年金制度)を見直す良い機会であるとともに、事業主が年金資産運用への意識を高める絶好の機会と捉えるべきだと思います。現在、企業は適格年金資産の運用を信託銀行や生保等に任せていますが、自社の年金制度の特性に合った運用かどうかをしっかりモニターしているとは言い切れません。


適格年金制度の多くが期限までに移行すると予想される規約型確定給付企業年金はこれまでとは違い将来の給付を確実に行う(年金の受給権を保護する)ために、一定水準以上の年金資産の積立が義務付けられ、企業年金の管理・運営に携わる関係者の責任(受託者責任)を明確にすることや加入者に対して年金財政等の情報を開示することが義務付けられます。
企業年金で最も重要な資産運用で事業主の責任がクローズアップされてきます。


 最近の厚生年金基金連合会(10月より企業年金連合会)のアンケート調査では、規約型確定給付企業年金を採用する企業の約60%が年金資産運用に対し特段の取り組みをしていないことや運用機関の評価(特に定性評価)が困難であることが明らかになっています。


 「四半期毎に生保総合口の運用報告を受けているが、ただ報告を聞くだけで評価ができないまま契約を継続している」とか、「キャッシュ・バランスに移行したことで、国内債券のウエイトが急激に高まると共に、理解できないヘッジファンドが新たに組み入れられ年金資産運用がどうなるか心配で困っている」等の企業の悩みは氷山の一角に過ぎないように思われます。


 受託者責任の視点からは、年金資産の運用で運用機関と緊密な資本関係、取引関係又は人的関係等以外の合理的な理由のないまま年金資産の管理及び運用契約を継続することは加入者に不利益をもたらし、責任を果たしているとはいえません。企業は合理的な理由を把握する手始めとして、中立的な第三者機関の意見を参考にしつつ運用機関を継続的にモニタリングする体制作りと加入者の立場に立った運用評価能力の養成が必要となります。

 

 




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